「ではこれより、香坂貴子、黒咲英翔の両名への審問を開始する」 暗いコンクリート張りの部屋に、無感情な声が響く。 英翔と貴子は、簡素なパイプ椅子に座らされていた。 そして二人を審問する人物は、計四名いた。 KOTRTの総責任者である、内藤洸一。 同じく第二席、哉原諺該。 第三席、ベルゼルド・レッツェル・ヴィードルッシェ。 第四席、ガルボ・フォルキン。 の、計四名である。 その中央に座っている内藤が、報告書を見ながら二人に話しかける。 「さて今回の事件だが・・・原因は初塚のご息女である初塚霧恵により形成された『天使』の暴走が、  そもそもの発端である、ということだな。報告書を見る限りは。問題ないな?」 「はい」「はい」 二人の返事にさして構うことも無く、内藤は淡々と続ける。 内藤は、弱冠十七歳にしてKOTRTの総責任者であるだけに、その仕事ぶりは徹底している。 いつも黒のスーツに身を包み、その印象は、エリート社員とでもいった風であろうか。 「そして・・・『天使』が暴走したことによる被害。乗用車三台。パトカー一台。ビル三棟。  人的被害に関しては死亡者が約九名。負傷者二名。数字だけ見れば、この国では結構な事件だな」 報告書を読み上げる内藤に、二人は口を結んだままだった。 「最も問題なのは・・・・私の許可なしに譲渡されたばかりの『エクス・カリバーン』の無断私行。  及び鞘の『因果干渉能力』の私用・・・・・普通ならクビどころか死刑にしてやりたいところだが・・・不問だ」 「「 ・・・・・は? 」」 「だから、不問だ」 突然の無罪放免に、貴子と英翔は同時に驚きの声を上げた。 二人とも、それ相応の責任を取る覚悟をしていたため、拍子抜けしてしまった。 「初塚の本家からの頼みでな。今回のことは自分たちの娘に責任があるといって、お前達の責任を取り消したんだ」 呆気なすぎるその言葉に、二人とも口を開けて唖然とした。 「でもあれよね〜、たかだか『天使』止められないようじゃ、貴子も大した事無いわねー」 「な、なんですってヴィードルッシェ!」 「やめろ。見苦しい」 低俗な言い争いを始めようとする貴子とヴィードルッシェを内藤が一喝する。 貴子とヴィードルッシェは犬猿の仲であり、いつも衝突が絶えない。 「では今回の査問はこれにて終了」 そう言って内藤は、ガルボと一緒に査問室を出た。 その後を、英翔は追った。 「あ、あの内藤さん!」 「?どうした黒咲。何か私に用でも?」 「その・・・お聞きしたいことが・・・」 「・・・私でよければ」 英翔が、ずっと疑問に思っていたこと。 それは黒い天使との戦いの最中に見た、霧恵さんと結ヱさんの記憶。 に、交じった、謎の映像。 言葉。 「・・・・・・か、『邂逅の門』という言葉を、聞いたことがありますか?」 「それを何故私に?」 「内藤さんなら、何か知っているかと―――――」 「残念ですが・・・・・そのような言葉に聞き覚えはありません。失礼します」 「あっ――――――!」 英翔が呼び止める暇もなく、内藤はさっさと行ってしまった。 廊下には、英翔が一人取り残された。 英翔と別れた後、内藤は懐から携帯電話を取り出した。 この時代では在り得ない、かなり小型化されたモデルである。 ダイヤルをプッシュすると、内藤はあるところに電話をかけた。 「・・・内藤です。お喜び下さい、『門番』の候補が見つかりました。真門黎明様・・・・」
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